うつかんの本棚

うつ病になったアラサー看護師→現在「専業うつ」。病気・読書から得た情報を発信します。

うつ病患者を支える家族の苦悩(差別する気持ちと闘う日々)


 こたつで春をじっと待っています。そらそら(@sorasorautsu)です。
お越しいただきありがとうございます。
 

  今回は、「うつ病患者を支える家族の苦悩(差別する気持ちと闘う日々)」というテーマでお話しします。

 

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軽視されがちな家族へのケア


 うつ病と診断されると、言うまでもなく、まずうつ病患者本人へのケアが重要である。
 しかし、うつ病と診断された場合、患者本人だけではなく、その家族へのケアも非常に重要となってくる。

 

うつ病患者の家族-私の経験


 私は一うつ病患者であると同時に、うつ病患者の家族でもある。

 私が中学生の時に、父がうつ病と診断されたのである。

 

 ある日突然家族会議が行われ、父が「仕事には行けない」「病気になった」「うつ病らしい」と言うのだ。
 最初は何を言っているのか全然理解できず、「え?うつ病?なにそれ?」「すぐ良くなるんでしょ?」という感じであった。
 一家の大黒柱である父がいきなり折れたのである。
 驚きよりは唖然としたのを覚えている。
 まさかその時、その病気によって家族全員がその後10年以上にわたり振り回されることになるとは、誰も想像していなかっただろう。
 
 うつ病になったのは父である。

 しかし父のうつ病は家族全員の生活を一変させた。
 父親が毎日家にいるという目に見える変化から、家族全体に漂う雰囲気という目に見えない変化まで、うつ病は患者本人だけでなく、周りで生活する家族全体を徐々に暗くさせていった。

 

 父のうつ病は次第に悪化していく。
 毎日のように「死にたい」という言葉を聞き、死んだような目で何かを訴えかける。
 当時私は思春期でもあり、そんな父を一人の男として、父親として認めることができず、今ではうつ病患者に禁句であると常識になっている「もっとがんばってよ」という言葉をよく浴びせていた。
 正直、精神疾患に対して差別的な気持ちもあったと思う。
 父の病気を認めたくないという気持ちや病気への差別する気持ちと闘う日々が続いた。
 今思うと酷い息子であったと思う。
 ただ、その当時は自分も必死だった。

 

 父の病状が悪化すると、周りの家族はさらにうつ病に振り回されることとなる。
ある日突然、父が「死んできます」と言葉を残し、外に出ていく。慌ててその姿を追い、父を探し回り、家に連れ戻す。
 また家では、包丁や金槌を持ち出して、私に差し出しながら「殺してくれ」と泣きながら何度も懇願する。
 このようなことは2度3度ではなかった。
 正直本当に殺したいくらい、うつ病が憎かった。
 患者本人からだけでなく、家族からも平穏な日々を奪っていく。

 今でもその当時の出来事が夢に出てくることがある。
 一種のトラウマと化している。
 
 そのような状況になり、その後、父は精神科の閉鎖病棟へ入退院を幾度となく繰り返すこととなる。
 父のいない生活に正直ホッとする。

 このように家族は疲弊していく。
 私の青春時代は父のうつ病で黒く塗りつぶされている。
 もう二度とあの日々には戻りたくはない。
 
 以上は私の体験であり、うつ病患者も、患者を支える家族にも様々な状況があり、異なる体験があることだろう。
 しかし、共通して言えることは、うつ病は患者本人だけでなく、家族への影響も大きいということである。

 

家族を苦しめる要因と対策


 では、何がそんなにもうつ病から受ける影響を大きくさせてしまったのだろうか。私の経験から紐解くと……
 ① うつ病を正しく理解していなかったこと
 ② うつ病との距離感を正しく保てなかったこと
以上の2点が大きな要因であったと感じる。

 では、どのようにすれば以上の2点に対応できるのか。そして、うつ病患者に振り回されずに、家族全員の健康を維持できるのかについて考えを述べたいと思う。
 うつ病患者の家族としてうつ病に振り回された生活をしたくないなら……

 ① 患者だけでなく、その家族もうつ病を受け入れ生活していくこと
 ② 患者の状態に合った心理的・物理的距離を保つこと
以上の2点が必要である。

 

 病気を理解するためには、まず病気に対する正しい知識が必須である。うつ病に対する正しい知識があって初めて正しい理解ができる。そして、時間はかかるかもしれないが、最終的に患者も家族も病気を受け入れることができるのである。
 うつ病の精神症状・身体症状を理解していれば、一歩下がって病気を捉えることができ、患者の言動が、病気の症状での言動なのか判断ができる。すると家族も「病気が言わせている」と、ある種割り切って患者に接することができ、患者に寄り添いながらも、心理的には一定の距離を保つことができる。また、医師の判断のもと、必要ならば入院等の物理的距離を置くことも患者・家族双方にとっての休息となる。

 このように良い意味で患者とある一定の距離を保つことは、病気の理解を深め、患者・家族の健康にとっても重要なものとなる。

 

 うつ病についての情報は今やネットや数々の書籍に多く存在している。情報源が信頼できる所ならどこからでも情報収集ができることだろう。
 しかしここであえてお勧めしたいのは、(患者が認めるなら)毎回でなくてもよいので、うつ病患者が医師の診断を受けるときに、一緒に受診室へ入り、診察を隣で受けることである。患者と一緒に受診すると、うつ病についての基礎的な知識はもちろん、現在の患者の状態や治療経過も知る機会となる。また本人の状態や対応について直接医師に相談することもできるだろう。医師としても、患者の家での状態について第三者から情報を得ることができ、治療に役立てることができる。

(※病院や患者の治療経過によっては、医師と患者の一対一での診察が重視されることもあるため、患者とともに診察を受ける際には病院側へ確認したほうが良い)

 

 以上は一患者、一うつ病患者の家族としての経験から学んだことを述べた。これがすべてのうつ病患者や家族に当てはまるものでないと理解した上で、うつ病の正しい理解・治療へ役立てていただければと思い記した。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。